9/11(日) 20:00配信
猫にとっての「植物」・「生花」
猫は元々完全肉食動物なので、ネズミや鳥、トカゲや昆虫などを食べて生きてきました。基本的には、メインの食材として植物を口にすることはありません。そのため、唾液の成分や歯の形状、消化器官の構造や機能などは、全て「肉食」に適したようにできており、植物を消化するのは不得意です。このことからも、猫が植物を口にすることはあまり歓迎できることだとは言えません。
ただし、猫が植物を口にしてしまった場合、消化しづらい事はあっても、全ての植物が猫にとって危険なわけではありません。とはいえ、致死的な中毒症状を引き起こす成分を持っている植物もあるため、猫に対して危険な植物、安全な植物の双方を知っておくことが大切です。
猫がいる部屋に飾ってもOKな生花とは
猫と一緒に暮らしていても、室内に花を飾りたいという飼い主さんもいらっしゃるでしょう。そんな飼い主さんに、猫にも安全だといわれている生花をご紹介します。
1.ガーベラ
ガーベラはキク科に属する花で、本来キク科の花は猫にとって有害です。しかし、ガーベラには毒性がなく、強い香りもないため、猫と一緒に暮らす空間に飾っても安全な花です。価格も手頃で、大抵の花屋さんで購入することができるため、手頃な花だといえるでしょう。
注意点としては、茎が腐りやすいということです。愛猫が万が一腐った茎を口にしてしまうと、下痢を起こすかもしれません。茎の状態をよく観察し、腐ってしまった部分はすぐに処分するようにしましょう。
2.バラ
バラの花や葉には毒性がありません。また、ガーベラと同じように大抵の花屋さんで購入することができる、手頃な花です。
ただし実と種は、猫に有毒です。種の中の成分が胃酸と反応すると、青酸中毒を起こすことがあるからです。また、飲み込んで腸内に留まってしまい腸閉塞を起こす可能性もあります。猫の生活空間内にバラを飾りたい場合は、鉢植えではなく切り花にするべきでしょう。
3.ラン科の花
ラン科の植物は、基本的に猫に無害で安全です。具体的には、カトレア、胡蝶蘭、シンビジュウム、デンドロビウム、デンファレといった花々です。切り花よりも鉢植えの形で流通しているものが多いようです。
4.金蓮花
やはり鉢植えでの流通が多く、また花壇での栽培が主流の金蓮花も、猫に安全な花です。
花、葉、茎に毒性はなく、猫はもちろんですが人間も食べられる花だといわれており、ハーブとして使用されることが多いです。ナスタチウムとも呼ばれています。
5.百日草
ガーデニングの初心者にも人気のある百日草も、ガーベラと同様にキク科植物ですが猫には無害だということが分かっている花です。
暑さに強く、水やりを忘れさえしなければ夏でも栽培できるそうなので、猫と一緒に暮らしているガーデニング初心者の方には最適な花だといえるかもしれません。
猫が危険な植物を食べてしまう理由
本来、メインの食材として口にすることはないはずの植物を、なぜ口にしてしまう猫達がいるのでしょうか。
実は、猫達が本来の食材ではないものを食べてしまうのは、植物だけとは限りません。毛布や毛糸などの繊維製品や、石などを口にし、飲み込んでしまって開腹手術をしなければならなくなった猫たちも決して少なくありません。
これらは、「異食」と呼ばれている行為です。はっきりとした理由は明確になってはいませんが、生活環境や多頭飼い、運動不足、飼い主さんとの関係性などがうまくいかずに受けたストレス、病気、栄養不足などが原因だと考えられています。
また、好奇心や興味から口にして遊んでいたのが習慣化してしまったというケースもあるようです。
このような場合は、愛猫には不必要なストレスを与えず、毎日遊んで適度に運動をさせたり栄養バランスの取れた食事を適量与えるといった健康管理を心がけることで、異食も予防できるでしょう。
まとめ
今回は、猫と一緒に暮らす空間に飾ったり栽培しても安全だということがわかっている生花をご紹介しました。
猫と一緒に暮らしている方で、同時に植物も楽しみたいという飼い主さんは、まずは猫が万が一、口にしても安全だと分かっている花を手に入れるようにしましょう。同時に、猫にとって危険な植物についても、しっかりと知っておくことが大切です。
私達の身近で楽しまれているユリ・チューリップ・スズラン・ヒヤシンスなどのユリ科植物や、チョウセンアサガオ・ホオズキ・ニオイバンマツリ・トマトなどのナス科植物、サツキ・シャクナゲなどのツツジ科の植物、パンジーなどのスミレ科の植物、アジサイ、スイセンなどは猫への危険度が高い植物なので覚えておく必要があります。
また、愛猫が本来の食べ物以外のものを口にしてしまわないように、できるだけストレスを与えない生活環境を整えること、飼い主さんとのコミュニケーションをしっかりと深めること、猫にとってバランスの良い適切な食事を与えること、毎日必ず遊ぶ時間を作って運動させることなどを心がけてあげることも大切です。
(獣医師監修:寺脇寛子)